ISBN:409179274X 単行本 西原 理恵子 小学館 2004/11 ¥820
昔、真面目に勉強して入った地元の進学校。
それまで中学で上から50人目ぐらいの成績だったのが、高校で下から50人目ぐらいになって、完全に自信を失くし、ふてくされてた頃、これは成績に関係ないからと、業者テストの問題を読まず、テキトーに答え欄に鉛筆で塗りつぶして出したら、なんと校内ケツから3番目の順位で、おいおい、この学校にそこまでひどいバカが、2人もいたんかい?誰だよ?
・・と思ってたら、そのうちの一人がIだった。
Iは、いつも夢みたいな事ばっかし言っていて、世間知らずで、男運が悪くて、正直、あんまし可愛くなくて、私は彼女が苦手で、さりげに避けてるのに、私の姿を見るといつもニコニコしながら寄ってきてて、特に親しくしてなかったのに、私が上京してからも、せっせと手紙を送ってよこし、むげにするのも何なので、3回に1回ぐらいは手紙の返事をしてた。けど、ホントは迷惑だった。
別に聞きたくないのに、彼女は、家庭が複雑なこと。家が貧乏で進学する金は出さないと言われて、浪人して酒屋でバイトしながら美大目指してるといったこと。いつもいつもダラダラ書いて、「私、頑張ってるよ!」と手紙を送ってくる。
苦痛だった。
本当に苦痛だった。
特別に絵が上手いわけでもなく、バイト三昧で、ちゃんと専門の塾や予備校にも通えるわけでもなく、成績もどん底なくせに、武蔵美と多摩美だけ受けて合格するわけないのに、落ちてすぐに、高校の美術教師の悪口を書いて「あいつのせいで落ちた!」なんて手紙を書いて送るなよ。
現実見れよ。アンタ見てると痛々しいんだよ。
無駄な受験料で、その出っ歯を矯正したほうが、まだ幸せになるんじゃない!・・と、ひどい言葉を投げつけてやりたくなるぐらいイライラするんだけど、偽善者の私は、いつも、「Iさんは頑張ってるねえ。頑張ってねえ」としか言わなかった。
本当に苦痛だった。
Iは専門学校に進路を変えたのはいいけど、学費も生活費も大変なのに、わざわざ物価の高い東京にやってきて、仕送り貰って楽しくキャンパスライフを送る田舎の友達の所に顔を出しては傷つき、貧乏な私の所に来ては、ありえない将来を語る。
ある日、教材売るバイト先で優しくしてくれた男の人に頼まれて、サラ金に行った話しをして、ああ、もう、この人とこれ以上関わるのはやめようと決心した。
その後、他の田舎の友達から電話があった。
「Iさん、そっちに来た?」
「来たけど」
「もう、最悪。来るなり、売り物の教材の説明始めちゃってさあ〜」
Iは何も勧めなかった。
いつものように、グチと嘘ばっかしの夢を話して帰って行った。
私は、心の中で、ゴメンとIに言った。
でも、それから連絡がきても答えなかった。
数年後、田舎の駅前でIに偶然会った。
まだ、東京に住んでいると言った。
Iはずっと口元を手で不自然に押さえていて「ちょっと、歯がガタガタ抜けちゃって、かっこ悪いの」と気まずそうに笑った。
私は病気?とも聞かず、車、待たせてるから、と、笑って別れた。
嫌いだ。私はIが嫌いだ。
あれは、私だ。あれは、もう一つの私だ。いや、私はI以下だ。
ダメでダメでダメだったくせに、プライドだけは高くて、何も実行に移さなかったから、失敗もすることもなかった自分。
私はIをバカにする資格もない弱虫だ。
「上京ものがたり」を読んで、私は泣いた。
Iの為ではない。私は、そんなに優しくない。
弱虫で嘘つきの自分の為に泣いた。
でも、Iが、どこかの空の下、幸せになれてたらとは願ってる。
本当だよ。
昔、真面目に勉強して入った地元の進学校。
それまで中学で上から50人目ぐらいの成績だったのが、高校で下から50人目ぐらいになって、完全に自信を失くし、ふてくされてた頃、これは成績に関係ないからと、業者テストの問題を読まず、テキトーに答え欄に鉛筆で塗りつぶして出したら、なんと校内ケツから3番目の順位で、おいおい、この学校にそこまでひどいバカが、2人もいたんかい?誰だよ?
・・と思ってたら、そのうちの一人がIだった。
Iは、いつも夢みたいな事ばっかし言っていて、世間知らずで、男運が悪くて、正直、あんまし可愛くなくて、私は彼女が苦手で、さりげに避けてるのに、私の姿を見るといつもニコニコしながら寄ってきてて、特に親しくしてなかったのに、私が上京してからも、せっせと手紙を送ってよこし、むげにするのも何なので、3回に1回ぐらいは手紙の返事をしてた。けど、ホントは迷惑だった。
別に聞きたくないのに、彼女は、家庭が複雑なこと。家が貧乏で進学する金は出さないと言われて、浪人して酒屋でバイトしながら美大目指してるといったこと。いつもいつもダラダラ書いて、「私、頑張ってるよ!」と手紙を送ってくる。
苦痛だった。
本当に苦痛だった。
特別に絵が上手いわけでもなく、バイト三昧で、ちゃんと専門の塾や予備校にも通えるわけでもなく、成績もどん底なくせに、武蔵美と多摩美だけ受けて合格するわけないのに、落ちてすぐに、高校の美術教師の悪口を書いて「あいつのせいで落ちた!」なんて手紙を書いて送るなよ。
現実見れよ。アンタ見てると痛々しいんだよ。
無駄な受験料で、その出っ歯を矯正したほうが、まだ幸せになるんじゃない!・・と、ひどい言葉を投げつけてやりたくなるぐらいイライラするんだけど、偽善者の私は、いつも、「Iさんは頑張ってるねえ。頑張ってねえ」としか言わなかった。
本当に苦痛だった。
Iは専門学校に進路を変えたのはいいけど、学費も生活費も大変なのに、わざわざ物価の高い東京にやってきて、仕送り貰って楽しくキャンパスライフを送る田舎の友達の所に顔を出しては傷つき、貧乏な私の所に来ては、ありえない将来を語る。
ある日、教材売るバイト先で優しくしてくれた男の人に頼まれて、サラ金に行った話しをして、ああ、もう、この人とこれ以上関わるのはやめようと決心した。
その後、他の田舎の友達から電話があった。
「Iさん、そっちに来た?」
「来たけど」
「もう、最悪。来るなり、売り物の教材の説明始めちゃってさあ〜」
Iは何も勧めなかった。
いつものように、グチと嘘ばっかしの夢を話して帰って行った。
私は、心の中で、ゴメンとIに言った。
でも、それから連絡がきても答えなかった。
数年後、田舎の駅前でIに偶然会った。
まだ、東京に住んでいると言った。
Iはずっと口元を手で不自然に押さえていて「ちょっと、歯がガタガタ抜けちゃって、かっこ悪いの」と気まずそうに笑った。
私は病気?とも聞かず、車、待たせてるから、と、笑って別れた。
嫌いだ。私はIが嫌いだ。
あれは、私だ。あれは、もう一つの私だ。いや、私はI以下だ。
ダメでダメでダメだったくせに、プライドだけは高くて、何も実行に移さなかったから、失敗もすることもなかった自分。
私はIをバカにする資格もない弱虫だ。
「上京ものがたり」を読んで、私は泣いた。
Iの為ではない。私は、そんなに優しくない。
弱虫で嘘つきの自分の為に泣いた。
でも、Iが、どこかの空の下、幸せになれてたらとは願ってる。
本当だよ。
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